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2008年7月 3日 (木)

蝉の車

【自分で動かすから、自動車3】

セミが死んでいるとします。
いきなり暗い喩えになりますが。

少し気色悪いかも知れませんが、
拾ってみましょう。
一瞬、ハッとさせられます。

あれだけの音量で数日の間、
ひたすらに鳴き続けた蝉。
あの音に比べて、
その死骸の体重の、
なんと軽いことか。

しばし呆然とし、
少し空恐ろしい気分になるほどに、
その死骸はあまりに軽過ぎるのです。

まさに力を使い果たしたのだ。
本能のなせる技だ。

そう口で言うのは容易いですが、
そんなものを超えていくほどに、
死骸を握ったはずの掌の中には、
何も感じられないのです。

そして、だからこそ、
生きている蝉というものは、
すさまじいまでに力強く、
神々しいまでに騒がしい。
生命力というものを表す何ものかと、
ほんの少しだけの骨格でできている、
人を圧する何か。
だからこそ、ほんの僅かな時間、
あれだけの音と力を持ち得るのでしょうか。

今日の車には、そんな蝉の力と、
非常に似たものを感じてしまいます。

Img_32441s




(クリックすると拡大します)

いかがでしょう。
本当に必要最低限のものだけで構成され、
とにかく動かすことができる。
荷物を運ぶことができる。
それ以上の機能を付ける気がない、この潔いたたずまい。
機能美とは、こういうことを言うのではないでしょうか。

実際動かしてみれば、
乗り心地も使い勝手も最悪なのでしょうし、
排ガスなんかも随分出るのでしょう。
ですがこれらのことは、
ここで言っている「動く」という機能とは、
本来は何の関係のないものです。

ただ、人の力を借りずに動くということ。そのことの驚き。
虚飾を全て取り除いたような、この車の構造は、
それを純粋に感じさせてくれるように思うのです。

そして当たり前のように、
この車は今日も落ち葉やゴミを集めるでしょう。
セミが鳴き続けるように、車は動き続けます。

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コメント

いい文章だなあ。。。
文章の中に、ふと涼しさを感じます。

蝉ってだから鳴くのかなと、
たまに考えたりしますね。
外にでて一週間の命って切ない。

投稿: reachia | 2008年7月 3日 (木) 23時42分

一週間が長いか短いか。
このあたりは蝉でないとわかりませんが。
潜っている数年から数十年というのが、
遠足に出る日を待つわくわく感のようなもので満たされていれば、
なかなか幸せかも知れません。

投稿: 書く文和 | 2008年7月 4日 (金) 22時38分

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