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2008年10月 8日 (水)

「共感できない」を楽しむ

台北の風景で続けようと思ったのですが、
あまりにインパクトのある出来事があったので、
それを書いてみることにしました。

ある映画を見たのです。
また映画かよ、とお思いかも知れませんが。
昨日の晩、近くの喫茶店で無料の映画上映会があるというので、
のこのこと出かけてきたというわけです。

昨日やっていたのは『侠女』。

侠女
侠女
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※今回、雰囲気を伝えるためにパッケージ写真を見せたかったので、
このためにわざわざアマゾンのアフェリエイトID取りました。
あ、今回の記事を読んで貰えばわかりますが、別に買えとは言ってませんからね。

監督は胡金銓。

香港や台湾の映画界ではクロサワ的巨匠として、
映像にこだわる武侠映画の第一人者として有名な方のようです。

実のところ、今回初めてこの方の作品を見たのですが、
とにかく映像にこだわりが強いな、というのは素人目にもすぐわかります。
この『侠女』、彼の映像美学が思い切り詰まっていて、
代表作とも言える一本なんだそうです。

まあ、映像の美しさや殺陣の爽快さの紹介は、私の任ではありません。
ちゃんとした映画評を書かれる方々にお任せしましょう。
私にとっては、そういうことは全部置いておいて、
とにかく一言、言っておきたいことがあるのです。

わからなさがこんなに面白い作品は、初めてでした。

作品そのものの理解はすっ飛ばして、この作品は私にとって、
「共感できないこと」を楽しむエンターテイメントだったのです。

様々な香港映画やハリウッド映画などの海外映画は、
世界対応も考えているからか、自分の感覚に沿ってくる場所もかなり多く、
だからこそ、自分の感覚の基準だけで判断しがちです。
つまり「何だよこれ、観客のことわかってねーって」と思うわけです。

この作品は違います。

エンターテイメントを想定して作っているな、
ということはところどころで十分にうかがえるのです。
派手なアクションシーンとか、細かい笑いどころとか、
そこは別にわかるし、それなりに自分に近づいているな、
という手応えがあります。

ですが、監督が力を入れているな、と想定される要所要所で、
自分が想定している「まあ、この映画ならこうだろう」という展開や、
「このシーンからならこう来るだろうな」と思っている流れが、
破壊的に吹っ飛んだり、断裂して渡れなくなっています。
「おい、これじゃ先行けないじゃないか」と思うと、
想定していた道と全く違うところに繋がっていて、
ずんずんと作品は進んでいってしまうのです。

こうした印象を何度もぶつけられることにより、
「ああ、なるほど、俺の方が観客として適切じゃないんだ」
と言うことがはっきりと突きつけられます。

それでも、元から難解であることが知られていて、
「お前ら考えろよ」と上から言いつけられるような作品なら、
「こんなの監督の独りよがりだろうがよ」という逃げ道があります。

この作品は違います。

エンターテイメントとしても成立させていることが随所にうかがえるので
(感覚にズレもあるでしょうが、今の観客にもわりと伝わっていたようなので)、
「あっ、これだけわからないのは俺だけっぽい」というのが伝わります。
社会全体から思い切り胸を突き飛ばされたような、
もう何の逃げ道もないような距離感を突きつけられます。
それが非常に興味深く、面白いのです。

つまらないとか面白いじゃないんです。
よくわからないんです。
何で、こんな明らかにエンターテイメントを想定した映画が、
こんなにわからないことになっているのか。
その感覚自体が面白いんです。

映画自体が面白いんじゃありません(あっ、言っちゃった)。

大げさに言えば、異文化理解の楽しみが、
この映画を見るだけで体感できるわけです。
こりゃすごい!

テーマパークのアトラクションにたとえるならば、
凱旋門みたいな大きな入り口で、みんなを招き入れているのに、
出口は野球ボール一個分の穴しかない。
「おい、これじゃ出られないだろ!」と怒ると
「いいから通れよ」とぶっきらぼうに言われる。
通ってみると、異常に伸縮性のある素材で出来ていて、
スポッと抜けて通れてしまう。
そして、出口のあまりの異常な形に驚いて、
アトラクション中に何があったかほとんど忘れてしまう。
そんな映画でした。
…いや、「どんな映画だよ」とお思いでしょうけど、
少なくとも私にとっては、そんな映画なんです。

上下編に分かれており、合わせて200分。
大作ですが、せっかくですから一度休みを入れてでも、
全部ご覧になることをお勧めします。
上編だけでは、私の言う感じはつかめません。
ただ、見ること自体は勧めませんよ。
つまんなくても責任取りませんからね。

「全く共感できない」と認めることから始まる理解もあるな、
とつくづく感じた昨日の一夜でありました。
何かしらに使えそうだし、DVD買おうかなあ…。

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